オーボエの名前の由来
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私は今フランスに住んでいて、言語学と生物学を学んでいるので、まぁこの手の話題は専門分野なのですが。今回は「オーボエ」という楽器の名前の由来に迫ってみたいと思います。
結論から言うと、オーボエはフランス語の”haut bois”という単語が由来になっているのですが、これだけだとwikipediaで調べても簡単に得られる情報なので、もう少し掘り下げて解説していきたいと思います。
まず、haut bois(haut-boisとも書く)は、haut=高い bois=木 という意味で、その2つが組み合わさったこの単語は、さしずめ「高い木」という意味になるのです。あまり意味が解りませんよね。
オーボエという楽器は、高音部のメロディーを担当する楽器として知られています。オーケストラでも、オーボエは高音部を担当してますね。
なので、「(他の楽器よりも比較的)高い(パートを担当する)木(管楽器)」という意味なのです。省略しすぎ…。
ちょっとフランス語の発音についても見てみましょう。
-まず、フランス語ではhを発音しません。全く発音しないのです。
平井さんという人がフランスに来たら、その人はフランスではイライさんになるのです(笑)
-auと書いて「オ」の音になります。アウではありません。
-単語最後の子音は(原則として)発音しません。
ここでは、それぞれの単語の最後にあるtとsは無視されることになります。
-oiと書いて「オア」の音になります。オイではありません。
以上のことをつないで読んでみると…あれ、「オボア」になっちゃいますね。
そうです、それでいいのです。事実、語源であるフランス語では、オーボエは「オーボア」と呼ばれますし、今から数十年前に日本で出版されたオーボエ教則本などには「オーボア」という表記が使われています。当時は外国から流入してきた言葉を、音のまま表記していたんですね。
(昔の表記には「オーボー」と書かれたものもありますが、こちらは英語のネイティブな発音を日本語にそのまま落としたものだと思います)
ここで、こんな疑問が生まれませんか?
高い木があるのなら、低い木もあるんじゃないか?
低い木をフランス語で書くとbas bois(バボア)となるのですが、残念ながらそのような楽器は確認されていません。
しかし、ファゴットの別名である「バスーン」は、低いという単語と関連性があるのです。
今度はフランスから離れてスペインに舞台を移しますが、スペイン語では低いをbajoと書いて「バホ」と読むんですね。
そして、木管楽器で低音を担当した楽器をbajón「バホン」と名付けたのです。これが時代を経るにしたがって転じて、バス―ンに代わっていったのです。まぁバス―ンなら最初からバス感が出ていますけどね。
名前の由来トリビアでした。